普段の勤怠管理で何気なく使用している『勤怠用語』。
厚生労働省の用語集や定義を調べれば、数え切れないほどの用語が出てきますよね。
インターネットが身近にあり、わからないことはすぐ「ググれる」昨今、何百とある勤怠用語とその定義を全てを暗記&常に把握している必要は、どちらかといえばないかもしれません。しかし、最近正しい定義を理解せずに従業員の勤怠管理を行なっている会社が増えてきていることも事実です。
実際に曖昧な定義を元に勤怠管理を行なった結果、辞めた従業員から訴えられ何千万を支払いを行わなければならなくなったケースも存在しています。↓詳しくは過去投稿をご覧ください。
今回は、会社側と従業員側の双方が良い関係を保っていくためにも知っておくべき、意外と知らない・説明できない勤怠用語についてご紹介します!
基本編:これを知らずに勤怠管理はできません!?
出社/退社&出勤/退勤
突然ですが、よくありがちな「勘違い」例をご紹介します。
工場勤務Aさんの勤務時間は 9:00-18:00 です。
8:30に出社しタイムカードで打刻 → 着替えをし、実際に業務を開始した時刻は9:00
18:00に業務が終了、着替え&スマホをいじる → 退社する準備をしタイムカードで打刻したのが18:40
上記の例で、どこが間違っているかお分かりでしょうか?
Aさんが会社に到着したのは8:30ですが、業務は開始していない点。そして、業務を終えたのが18:00でそこから業務以外のことを行っていたにも関わらず、タイムカードの「退勤」には18:40と押されてしまっている点です。
本人が会社に行く・帰ることを『出社・退社』と表現し、業務を開始する・終了することを『出勤・退勤』といいます。企業側から徹底して知らせない限り、上記を理解している従業員は少ないのではないでしょうか?(きちんと説明をしないと、なかなか理解されにくいことも事実ではあります。)
出社/退社は「会社に到着・出る時刻」、出勤/退勤は「業務を開始・終了する時刻」です。
この違いを会社全体で認識し、日々の勤怠管理で実践することを強くオススメします。
所定労働時間
こちらもよく聞く用語です。『所定労働時間』、きちんと説明できますか?
厚生労働省の定義は、以下の通りになっています。
就業規則等で定められた始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた労働時間をいう。なお、労働者によって所定労働時間が異なる場合は、最も多くの労働者に適用されるものを当該企業の所定労働時間とし、変形労働時間制を採用している場合は、期間内で平均したものを当該企業の所定労働時間とした。(引用元:厚生労働省『用語の説明』https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/16/yougo.html)
まず注目しなければいけないのが、『所定労働時間』は法定労働時間とは異なります。しかし、この2つは密接に関係しており、『所定労働時間』は法定労働時間の範囲内で設定しなければなりません。
つまり『所定労働時間』を8時間/日または40時間/週を超える労働時間とすることは原則できません。もしそれを超える場合があれば、超えた分は『時間外労働』となり、残業代を支払う義務が発生します(みなし残業時間を設定している場合除く)。
また、仮に法定労働時間を超えて働く場合は、36協定を結ぶ必要がありますので、そちらも合わせて気をつけたいポイントです。
休暇編:有給無給の区別、できていますか?
年次有給休暇
次は、2019年4月から始まった「働き方改革」で最も注目を浴びたと言っても過言ではない(!?)『年次有給休暇』です。これを機に、社内の付与制度を見直された企業も多いのではないでしょうか?
『年次有給休暇』とは、以下を目的として定められた制度です。
労働者が心身のリフレッシュや自己啓発などを図れるように、賃金の支払いを受けながら休暇を取ることを認めた制度。(引用元:働き方改革研究所『「勤怠管理」の基礎知識
休暇制度 概要』https://www.teamspirit.co.jp/workforcesuccess/law/workstyle-tips09.html)
ここで早速の注意ポイントです!
2019年4月に定められた「働き方改革法」では、雇用主は10日以上の『年次有給休暇』を有する従業員に対して、付与日から数えて1年の間に5日間の『年次有給休暇』を取得させなければならない、となっています(要時季指定)。※違反した場合、30万円以下(/1従業員)の罰金
この法改正を受けて、シメシメと考えた経営者が多いことも事実です。
実際にあった「勘違い」例によると、その経営者は毎日1時間遅く出社させ、それを約2ヶ月間(1時間×20日×2ヶ月)続ければ、有給5日分(40時間)取得したのと一緒でしょ?と考えたそうです。
従業員からすれば、これは悪夢以外の何ものでもありません・・・実際は、上記の方法はアウトです!『年次有給休暇』は
こんなことをしてしまえば、最悪辞めた後に労働者に訴えられてしまいます。人手不足が顕著な中堅中小企業からすると、従業員に有給を取られてしまっては困る・・・というのが現状ではあります。しかし、従業員もたまには休みが必要ですし、難しいことではありますが、会社と従業員の両者でバランスよく休暇をうまく調整していくことが求められています。
年間休日総数
求人サイトの募集要項でよく目にする『年間休日総数』。この用語の本当の意味をご存知ですか?
企業1年間分の休日の合計日数をいう。休日とは、就業規則、労働協約又は労働契約等において、労働義務がないとされた週休日(日曜日、土曜日などの会社指定の休日)及び週休日以外の休日(国民の祝日・休日、年末年始、夏季休暇、会社記念日などで会社の休日とされている日)をいう。ただし、年次有給休暇分や雇用調整、生産調整のための休業分は含まれない。(引用元:厚生労働省『用語の説明』https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/16/yougo.html)
厚生労働省は上記の通りに定めており、基本的にはその会社の年間カレンダーで割り振られた休日の総数を指します。
ここで注意しなければならないのが、『年間休日総数』に有給取得可能日数は含まれません!ということです。カウントするのは、会社が定める「労働する義務がない特定の日」であることが条件ですので、有給とはまた別の定義となっているんですね。複雑ですが就業後のトラブルなどを防ぐためにも、きちんと把握し掲載することが重要です。
近年話題の番外編:覚えておきたい!新・スタンダード
子の看護休暇
2019年に新しく追加されたのが、『子の看護休暇』です。
小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年に5日まで(子供が1人であれば5日、2人以上であれば10日)、看護のための休暇を取得することができます。看護休暇中の賃金については法律上支払い義務づけはなく、取り扱いは会社の判断に任されています。さらに、平成29年1月の法改正により、半日単位での取得が可能になりました。(引用元:働き方改革研究所『「勤怠管理」の基礎知識休暇制度 概要』https://www.teamspirit.co.jp/workforcesuccess/law/workstyle-tips09.html)
概要は上記の通りですが、ここで初めて見た、という方もいるかもしれませんね。
「働くママ」が明らかに増えている反面、最近では男性が育児休暇を取るなんていうケースも少しずつですが増加傾向にあります。昔と比べれば、子育てと仕事を両立する従業員に優しい社会になってきているのではないでしょうか。(先進国の中でいえば、日本の育児休暇の各制度は遅れています。しかし、年々改善してきているのは確かです。)
上記の制度を「当たり前に」活用する従業員、そしてそれを「当たり前に」承認する会社で溢れる世の中であってほしいですね♫ 以上、こちらは番外編でした!
まとめ
今回は、勤怠管理で多く使われる用語をご紹介しました。
2019年に始まった「働き方改革」に伴い、会社側だけでなく、従業員側もしっかりと各用語の意味を把握し、何が正しい勤怠管理なのかということを把握する必要性が出てきました。
いざという時のためにはもちろんですが、勤怠管理の知識を増やすことによって、その「いざという時」を迎えなくてよくなる方が、両者にとって良いですよね。
次回はもう少しマイナー、だけれども知っておいた方が良い用語集をご紹介します!
滝沢 きり
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